でんさいは、電子記録によって債権の存在や内容が証明されるため、紙の手形に比べて紛失や盗難のリスクが低く、印紙税も不要といったメリットがあります。しかし、でんさいも「債権」である以上、取引先の信用リスクは依然として重要です。日栄倉庫が債権者であるお客様に向けて「危ない取引先」を見分けるためのワンポイントアドバイスをまとめました。
1. 支払い能力の確認を怠らない
でんさいはあくまで「電子化された債権」であり、取引先の支払い能力がなければその価値はゼロに等しくなります。でんさいの譲渡を受ける前に、支払い企業(でんさいの発行元)の経営状況をしっかり確認することが最も重要です。
- 財務諸表のチェック:可能であれば、対象企業の損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書などを入手し、売上や利益の推移、自己資本比率、流動比率などを確認しましょう。特に、赤字が続いている、債務超過に陥っているなどの状況は要注意です。
- 信用情報の照会:信用調査会社(帝国データバンク、東京商工リサーチなど)の情報を活用し、企業の信用スコアや過去のトラブル履歴などを確認することも有効です。
- 業界の動向:業界全体の景気動向や、対象企業が属する業界の将来性も考慮に入れるべきです。斜陽産業に属する企業や、競争が激しく収益性が低い企業は、支払い能力が不安定になるリスクがあります。
- 急な売上の増減:急激な売上増は良いことのように見えますが、それに見合う利益が出ていない場合や、無理な受注で資金繰りが悪化しているケースもあります。逆に急激な売上減は、事業の縮小や顧客離れを示唆します。
2. 評判や風評にもアンテナを張る
数字に現れない情報も、取引先の信用度を測る上で重要な手がかりとなります。
- 業界内での評判:業界団体や同業他社からの評判を聞いてみるのも良いでしょう。支払いが遅れがち、トラブルが多いといった風評がある場合は、取引を慎重に検討すべきです。
- インターネット上の情報:企業のウェブサイトやニュースリリースだけでなく、SNS、口コミサイト、業界フォーラムなどもチェックし、不審な情報がないか確認しましょう。ただし、匿名掲示板の情報などは信憑性に欠ける場合もあるため、あくまで参考程度に留めることが大切です。
- 担当者の言動:契約前の交渉段階での担当者の言動も観察しましょう。説明が曖昧、約束を頻繁に変更する、連絡がつきにくいといった場合は、企業のガバナンスや誠実さに問題がある可能性があります。
- 資金繰りの厳しさを示唆する情報:例えば、社員の給与遅配の噂や、取引先への支払いが滞っているという情報がある場合は、非常に危険な兆候です。
- 経営陣や主要株主の頻繁な変更:短期間に経営陣が何度も入れ替わる、あるいは主要な株主が頻繁に変動している場合、内部で深刻な問題が発生している可能性があります。
3. 取引先の変化に注意する
通常とは異なる時には注意が必要です。
- 担当者の頻繁な交代や連絡が取りにくい:担当者が急に変わる、あるいはこれまでスムーズだった連絡が滞りがちになる場合、社内の体制が不安定になっていることが考えられます。
- 過度な値引きや条件の要求:採算を無視したような大幅な値引きや、これまでとは異なる無理な条件を要求してくる場合、売上確保に必死になっている裏返しとして、経営状態が思わしくない可能性も。
- 社長や経営陣の露出が減る、あるいは不自然に増える:経営者が急に表舞台に出なくなる、または必要以上に「大丈夫」アピールを繰り返すなど、不自然な言動が見られる場合は注意が必要です。
- 社員の離職や雰囲気の変化:「社員の出入りが激しい」「社内の雰囲気が以前と違う」といった情報も、従業員のモチベーション低下や会社の不安定さを示すことがあります。
4. 危ない取引先の兆候【実務目線チェックリスト】
- 支払いがたびたび遅れる
→ 小さな遅延が積み重なる会社は要注意。資金繰りが苦しい可能性あり。
- 急に発注金額や取引量を増やしてくる
→「逃げ切り目的」の駆け込み大量発注であるケースも。(取り込み詐欺もあり)
- 経理・総務担当が頻繁に変わる、連絡がとれない
→組織内の混乱は経営不安のサイン。
- 電話応対に元気がない、事務所に活気がない
→直接訪問・電話で「人の雰囲気」も観察ポイントです。
- 信用調査(帝国データバンク/東京商工リサーチ)で評点が低い or 急落している
→定期的に与信管理を行い、異変を察知しましょう。
5. 常に「最悪のシナリオ」を想定する
どんなに健全に見える企業でも、不測の事態で経営が悪化するリスクはゼロではありません。万が一、取引先が倒産した場合でも、貴社の損失を最小限に抑えるための対策を講じておくことが重要です。
- 債権保全策の検討:可能であれば、担保設定や保証人確保など、債権保全のための手段や万が一に備えて損失を保険金で補償する取引信用保険等を検討しましょう。
- リスク分散:特定の取引先に依存しすぎず、複数の取引先とバランス良く取引を行うことで、リスクを分散することができます。
不安を感じたらご相談ください
これらのポイントに当てはまるからといって、必ずしも危険な取引先であるとは限りません。しかし、複数の兆候が見られる場合は、より慎重な対応が求められます。
もし、お持ちのでんさいの支払企業に少しでも不安を感じるようでしたら、無理に取引を継続する前に、ぜひ当社にご相談ください。当社はでんさい割引のプロとして、お客様の状況を丁寧にお伺いし、適切なアドバイスをさせていただきます。
大切な資金を守るためにも、疑問を感じたらまずは専門家にご相談ください。